屋上利用提案競技 全体講評 審査委員長/輿水 肇(明治大学農学部教授、元造園学会会長)

公開審査風景

今年のテーマは「あなたが考える2050年の屋上利用」という、今の学生諸君が還暦を迎える頃の都市がどうなっているかを問いかけるものでした。反響は大きく、全国から85校173作品の応募があり、関係者一同たいへん嬉しく思いました。

12月に開催された一次審査では、これらの応募作品の中から6作品を選考するという作業に取り組みました。いずれの作品もレベルが高く、審査委員会は大変に苦労しました。3月1日、選ばれた6作品について最終審査を行いました。公開の場でのプレゼンテーションと質疑応答です。その結果をもとに審査委員全員による投票と議論を繰り返し、各賞の作品を選出しました。

最優秀賞を受賞した「山手線緑の天空回廊計画」は、山手線を緑で覆い尽くすことでヒートアイランド対策や環境対策に寄与できる可能性を取り上げた点が評価され、またプレゼンテーターが原稿を見ることなく、自分の言葉で作品の意図や内容を説明したことも高く評価されました。優秀賞には2点が選ばれました。そのひとつ「Share Ring」は、中国の歴史的な建造物である客家のイメージを膨らませ、閉空間のコミュニティーを形成することで住民参加型の活動が可能になるというユニークな提案が評価されました。「崖線の発見」は、東京に多く存在する崖線を有効に活用することで、地形と屋上を利用した住宅のあり方が評価されました。入選となった「広告住居」「Humanhill」「登る屋上ビル」の3作品も、新鮮な切り口、独創的な提案が注目されましたが、今回のテーマとの関連性がどうだったのかという意見がありました。
優秀賞は3作品に与えられることになっていましたが、優劣がつけがたく、入選が3作品となりました。

今回の学生コンペでは「自分の作品を、自分の言葉で」発表できたかが重視されました。このことは次回以降も継承されると思われますので、応募する作品への思い入れや考えを、自分のものとして深め、表現できるようにしていただきたいと思います。

2050年が環境に配慮した住み良い社会になっていることを期待しています。

追記:この原稿を書いている3月11日、東日本太平洋沖地震が発生し、東北地方や北関東の太平洋側を中心に大被害が発生しました。希望を持って暮らしておられた多くの方々が火災や津波により亡くなられたとの報に接し、心が痛むと共に心からお悔やみを申し上げる次第です。被災された方々の安寧と地域の一刻も早い復興を祈念しつつ、研究会ができる限りの支援の努力を結集していきたいと考えています。優秀賞を受賞された東北文化学園大学の関係者の皆様が全員無事であることが確認できたことに安堵いたしました。

受賞作品の内容と講評

最優秀賞
山手線緑の天空回廊計画

田窪 公一、白井 真一、金子 亮太、丹羽 亮介、丹羽 健、近藤潤一、伊藤 司貴、勝矢 真美、萩原 夕奈
東京農業大学 地域環境科学部 造園科学科

受賞者写真1 作品1-1作品1-2

作品pdfを閲覧する(1&2ページ、173MB)

未来の屋上利用を提案するということで、アイデアとロジックのバランスを大切にしながらプランを練りました。プレゼンテーションではいかにプランが魅力的かを伝えるために、模型やイメージを準備し、スライド作りにも時間を掛けました。また、造園的な切り口で、緑の重要性やどのように都市の緑を増やすのかが提案できたと思います。チームでの提案でしたが、それぞれの良い面が発揮された結果だと思います。本当に学生生活で最高の思い出になりました。チームを応援して下さった方々に感謝の気持ちで一杯です。ありがとうございました。

40年後、どんな街に住みたいかを考えさせる作品である。ヒートアイランド対策や環境対策を最大限考慮しつつ、山手線を緑で被覆するという大胆な構想と自分の言葉で発表したプレゼンテーション力が好評価につながった。

優秀賞
ShareRing

鈴木 美紗
東北文化学園大学 科学技術学部 人間環境デザイン学科

受賞者写真2作品2-1作品2-2

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この度は、このような素晴らしい賞を頂きありがとうございました。
私はこのコンペを通して、屋上利用の可能性から、コミュニティーなどの現代社会問題についてまで、様々な角度から学ぶことができました。また、プレゼンテーションでは自分の提案をうまく伝えきれず、「伝える力」の大きさを痛感しました。今回、この様な大変貴重な経験をさせて頂いたことは、今後の卒業設計等に必ず生かしていきたいと思っています。
事務局の方をはじめとした、コンペの関係者の方々には大変感謝しております。本当にありがとうございました。

2050年、人口が大きく減少する日本で、中国の歴史的建造物である客家のイメージを膨らませ、そこが閉空間であるとはいえ、住民が多様なコミュニティー活動を通して様々な生活スタイルを創造していくことの意味と価値を表現した点が高く評価された。

優秀賞
崖線の発見

松本 亜味、井戸 一隆、菊 池優介、君島 聡、田中 秀樹、塚本 慎一郎、松村 洋平
東京農業大学 地域環境科学部 造園科学科

受賞者写真3作品3-1作品3-2

作品pdfを閲覧する(1&2ページ、182MB)

今回のコンペでは2050年の屋上空間というテーマから、どうしたら屋上を利用して持続的な空間を作ることが出来るのかについてグループ内で意見を深めることができました。プレゼンテーションで自分達の提案を伝えきれなかったことには悔いが残っていますが、これまでグループのメンバーと提案を作ってきたことは、自分達の中でとても良い経験になりました。本当にありがとうございました。

東京に多く存在する崖線を有効に活用することで、地形と屋上を利用した住宅の在り方表現した点は示唆に富んでおり、緑の持つ効果も十分に表現されていた。但し、2050年と崖線との結びつきの説明に更に一工夫が欲しかった。

入選
広告住居

生出 健太郎
千葉大学大学院 工学専攻

受賞者写真4作品4-1作品4-2

作品pdfを閲覧する(1ページ目、60MB)
作品pdfを閲覧する(2ページ目、31MB)

このような賞を頂き大変光栄に思っています。このコンペへの参加を通じ、屋上という一つのスペースの新たな可能性は、建物用途はもちろん、その都市地域のコンテクストに深く関わり合って成立しうるものであると感じました。今回は都市部の屋上についての提案でしたが、今後は地方都市における屋上の在り方や土木構造物と屋上空間の関係等建築を学ぶ者として、より広い視野で屋上と都市の関わり方とその可能性について考えていきたいと思います。

迷惑施設である広告看板内部を住宅にして活用するという視点は新鮮であった。耐荷重、風荷重の問題やセキュリティー、防災面での対策について、更にブラッシュアップすれば実現性が高まる可能性を感じさせる作品であった。

入選
Humanhill

大田 真一郎
東京理科大学 工学部 建築学科

受賞者写真5作品5-1作品5-2

作品pdfを閲覧する(1ページ目、0.4MB)
作品pdfを閲覧する(2ページ目、0.9MB)

今回、このような賞に選出して頂いたことを心より御礼申し上げます。
2050年という、遠いようで近いような未来の屋上利用提案という課題に取り組む過程で、今後の地球環境および我々人類のライフスタイルをいかに持続可能型にシフトしていかなければならないかを、ひしひしと実感いたしました。今回プレゼンをした我々学生のアイデアが、少しでも未来の地球を考える上でのヒントとなれば幸いです。今後の自らの設計においても、「人と地球を考えた持続可能な暮らしのカタチ」というのを1つの指標にして取り組んでいきたいと思います。

アリ塚の生態をヒントに、持続可能型の住居を空気と水の利活用で実現しようという発想は、古いようで新しいものであった。2050年の世界との整合性についてリアリティーのある説明が不足していた点が惜しまれる。

入選
登る屋上ビル

坂本達典
工学院大学大学院 建築学専攻

受賞者写真6 作品6-1作品6-2

作品pdfを閲覧する(1ページ目、9MB)
作品pdfを閲覧する(2ページ目、4.5MB)

この度はたくさんの応募があった中、入選に選出頂いたことを大変嬉しく思っています。屋上利用というテーマに完璧に答えたかと言われれば自信を持って言えませんが、私がこの作品に込めた想いを評価して頂いたことは、今後の私の設計活動の大きな励みになりました。最後に、審査委員の方々並びに関係者の皆様、そして時間ギリギリになって手伝ってくれた後輩の西澤君、長塚君に感謝したいと思います。有難うございました。

突然の就職活動の為欠席せざるを得なくなり、唯一直接プレゼンテーションが出来なかった。発想がユニークで、発展するイメージが感じられたとして多くの審査委員より直接プレゼンテーションが聞きたかったとの意見が寄せられた。理由があったとはいえ、誠に残念な結果となった。

※ 氏名順不同・敬称略。

※ 応募作品の著作権は応募者に帰属し、発表に関する権利を主催者(NPO法人屋上開発研究会)が保有しています。応募者並びに主催者に無断で、作品ならびにアイデアを転用することを禁止いたします。

公開審査レポート

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