屋上利用提案競技 全体講評 審査委員長/輿水 肇(明治大学農学部教授、元造園学会会長)

公開審査風景
公開審査風景

5回目を迎えたこの競技会も例年同様内容の濃い、素晴らしい作品が多数応募され、関係者として大変喜んでいる。

今回は「あなたのアイデアで快適屋上空間を!」と題し、都市に残された未利用空間である屋上を有効に利用するための方法や屋上を通じて創造できる都市景観形成に関するアイデアと提言を募集した。

今回は従来になく様々な切り口で屋上を利活用しようとする作品が多く寄せられ、全体的に創意工夫がなされていたとの印象を受けた。

最優秀賞に選ばれた「スパイダーネットワーク」は応募規定ギリギリのものであったが、線路や高速道路上に屋根を構築し、そこに自然エネルギーである太陽光、風力、踏圧発電装置や遮熱塗料、ミストなどを取り入れることで「涼房」という新しい概念を取り込んだことが新鮮であった。応募ポスターでは気付かなかった点がプレゼンテーションで明らかになり、審査委員全員がある種驚きをもって高く評価した。優秀賞の「ECO EXIT」は非常口や非常階段という普段目立たない通路を、分かりやすくかつ憩いの場所として日常通路に転換しようというもので、新しい切り口として評価された。惜しくも入選となった「商店街においでよ!」「Nature×Lounge」「any sky」「マド」の4作品もそれぞれ素晴らしい切り口のものであったが、プレゼンテーションで審査委員を納得させることが十分にできなかった点が惜しまれる。

本来、優秀賞は2作品に与えられるが、入選作品との優劣がつけ難く、入選を4作品とした。
この学生コンペの特長は、単純に応募ポスターを見て優劣を判断するのではなく、公開の場で「自分の作品を、自分の言葉で」プレゼンテーションし、審査委員との質疑応答の結果をもって最終判断するところにある。また、審査そのものも公開の場で行われるため、結果が公平でかつ明瞭な点が特長になっている。

今回も例年同様「プレゼンテーション力」の良し悪しが評価を大きく左右する事となった。

次回以降もこの形式は継続されるが、訴えたい事をいかに見える化するのか、また、見えない環境をどうやってプレゼンテーションで理解させるのかについて更に格段の努力をすることが重要であることを再認識させられた。

屋上空間の有効利用については、ヒートアイランド対策面からも、また都市景観向上の面からも様々な仕掛けがなされ始めている。

当研究会が追及する「屋上空間の有効利用」というキーワードと「学生による屋上利用提案競技」が共に密接にリンクし、都市環境改善に結びつくことを切に期待している。

受賞作品の内容と講評

最優秀賞
スパイダーネットワーク

石川 啓太、木村 代治、武藤 茂、三上 誠、坂口 宗之
日本工学院専門学校 建築設計科

受賞者写真1 作品1-1 作品1-2

今回のコンペでは、グループでの提案ということで、ディスカッションを重ね、一人一人の意見がぶつかり合う中、高速道路の話題から始まり、屋根のないところに屋根を設け、有効活用する案に決まりました。この作品を通して、身近かな自然エネルギーを活用するシステムや、サスティナブルの可能性に着目することで、自然を大切にし、環境問題を目で見えるかたちで訴えることができたことが評価されたと実感しています。結果として、最優秀賞を戴き、提案者一同、心から喜んでいます。ありがとうございました。

応募条件の範囲を逸脱しているかどうかの境界線上の作品であった。コンパクトな空間単位が持続社会に取り重要だという提案は説得力があり、それがネットワークというシステムを通して無限に拡がっていくという可能性を秘めた作品に仕上がっている。ポスターでは表現できていなかったこのような内容が、プレゼンテーションでは十分に展開され、内容の濃い発表となった。

優秀賞
ECO EXIT

武田 真理
町田ひろ子アカデミー東京校 ガーデニングプランナー科

受賞者写真2 作品2-1作品2-2

同じ応募要項を読み作品作製をした筈ですが、様々な切り口の提案があり、とても勉強になりました。
切り口はそれぞれ異なっていましたが、緑化への意識は同じなのだと感じました。
その様な意識が広がり、より緑を身近に感じられる場所が増える様に、これからも頑張って行きたいと思っています。
このような機会を与えて頂き、本当にありがとうございました。

非常口と非常階段の現状という問題意識は明瞭でありわかりやすい。大胆な提案ではないが、すぐにでも試みられそうという点で多くの関心を呼ぶだろう。プレゼンテーションよりもポスターの方が説得力のある内容であった。北米諸都市にあるスカイウェイになぞらえて都市景観美へと展開したくだりはやや未消化な議論で、今後の詰めが必要だろう。

入選
Nature × Lounge

山下 晋彦、岸田 祥、武内 悠人
和歌山大学 大学院 システム工学専攻

受賞者写真3 作品3-1作品3-2

私たちの提案を選んで頂き光栄に思っております。
今回の公開プレゼンテーションを通して、屋上にはまだまだ可能性のあることを再認識できました。屋上空間を、どのように利用していくべきなのか、これからも日々考えていきたいと思います。また懇親会では新たな人のつながりを作ることができ、非常に良い経験になりました。是非来年も参加したと思います。来年は最優秀賞を取りたいです。
ありがとうございました。

屋上のラウンジという発想はすでに存在し陳腐である。ポスター以上の内容を口頭プレゼンテーションに期待したが、発表が明瞭でなく説得力に乏しかった。しかし模型は丁寧に作られており、内容の熟度は低いが細部にわたって検討されている点は好感がもてた。

入選
商店街においでよ!

岩澤 恵理子
町田ひろ子アカデミー東京校 ガーデニングプランナー科

受賞者写真4 作品4-1作品4-2

「屋上利用は大都市では需要があるが、『地方』での需要は作れないだろうか」と思う気持ちが起点となり、地方経済の活性化と絡めて立案しました。今回、地方の問題・水族館の技術・ビオトープなどについて勉強することができました。
しかし、費用対効果・永続性などご指摘いただき、そのとおりだと思いますので、今後は地元の役に立つような着実なプランを考えていきたいと思います。
どうもありがとうございました。

出身街の商店街を再生したいという強い思いが伝わる作品であった。ただその思いが強すぎるあまり、昔の賑わいをもう一度という単に過去を振り返っただけの内容に終始した点が惜しまれる。アーケード是非の問題を解決するような説得力ある提案が欲しかった。

入選
any sky

綿引 洋、伊藤 達則
東京理科大学 大学院 理工学研究科建築学専攻

受賞者写真3 作品5-1作品5-2

この度は、この様な賞に選出いただき本当にありがどうございます。私たちの提案した「anysky」は、普段の生活の中で考えていることであり、公開審査では、そのことについて共感していただけたり、想定外の意見をいただくことができ、大変貴重な経験をいただきました。このコンペでの経験を活かし今後の作品づくりに取り組んでいきたいと思います。

コンセプト中心の発表であり、発表者の人柄と作風とが一致した、独特の雰囲気を持った作品であった。コンセプトが具体的にどのように人々の都市生活に反映され、都市の環境再生にどのように貢献するのかが語られると、さらに説得力が増したと思われる。

入選
マド

大塚 貴浩、永嶋 圭、清水 孝裕、阿部 葉一、田村 知亜季
日本工学院八王子専門学校 建築デザイン研究科

受賞者写真6 作品6-1作品6-2

この度は、我々の設計した”マド”が入賞という結果を残せたことを嬉しく思います。また、受賞という結果もさることながら、このテーマについて考えた自分たちのアイデアを公の場で発表する機会を与えてくれたことについて大変感謝しています。プレゼンテーションには反省点が残りましたが、貴重な意見を頂き、今後 に活かすことのできる貴重な経験をすることができました。ありがとうございました。

“マド”というフレーム概念を屋上に導入したことは斬新であるが、フレームによって風景を切り取ることにより、風景そのものに意味が生じるという考え方は古くから存在し、新鮮味はない。窓の内外の関係が議論しきれていないため、せっかく軸線を設定し、軸状にマドを置いてみたものの、マドの屋上における意味、街からの意味を確立できなかった点が残念である。

※ 氏名順不同・敬称略。

※ 応募作品の著作権は応募者に帰属し、発表に関する権利を主催者(NPO法人屋上開発研究会)が保有しています。応募者並びに主催者に無断で、作品ならびにアイデアを転用することを禁止いたします。

公開審査レポート

過去の学生による屋上利用提案競技

「第6回学生による屋上利用提案競技」
公開審査会レポート
審査結果・講評
「第5回学生による屋上利用提案競技」
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「第4回学生による屋上利用提案競技」
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「第3回学生による屋上利用提案競技」
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